
累計発行部数7万部突破「たくや式」英語問題集シリーズの著者・藤井拓哉さんが、家族でのアメリカ生活や家庭での英語学習についてつづります。
英語教育の転換点で見えた未来 ~大学教員からの新たな挑戦~
2021年夏、日本中が東京オリンピックの熱気に包まれていた頃、私は「大学英語教員」というキャリアに一区切りをつける決断をした。それは、新型コロナウイルス感染症が落ち着きを見せ始め、世の中が次のフェーズに進む中で、自分自身のキャリアも次のフェーズに進むべきだと感じたからだ。
その背景には、Google翻訳をはじめとする自動翻訳機の技術の驚異的な進化がある。精度は、ここ数年で目を見張るほど成長しており、実際、学生たちが提出する英語のレポートやプレゼン資料は、これまで受け持っていた学生のものとは想像もできないほど洗練されていた。「これらは翻訳機の力を借りたものではないか?」と疑う気持ちと、「学生の実力を否定してはいけない」という教育者としての信念が交錯し「そもそも、自動翻訳機を使うことは悪いことなのか?『自動翻訳機を使うな』という英語教員だって論文執筆やプレゼン資料作成の際に翻訳機を活用しているのではないだろうか? そう考えると自動翻訳機を禁止にするのではなく、自動翻訳機と、どう付き合うかを指導するべきなのではないだろうか?」といった疑問が浮かび、そもそも今後英語教育がどこに向かうのかわからなくなっていた。
こうした思考を巡らせる中で見えてきたのは、「英語教育が今、大きな転換期を迎えている」という現実。最近ではAI技術の進化により、翻訳どころかプレゼン資料やエッセイの作成すら学生が行わないでよくなっている。そう考えると英語教員の在り方が今後どうなるか全く見えてこない。そのため、私は「自分の価値を高めるためには、大学という限られた枠の中に留まるのではなく、自分の周囲に広がる他の世界を知る必要がある。どうせなら海外!カミさんとは前々から海外に住めたら良いねという話もしていたし、子どもたちもバイリンガル教育のおかげ英語に嫌悪感はない。日本の企業に勤めてから駐在となると、英語圏以外の国にも行く可能性が出てくるから現地採用が良いかな。過去に父親の仕事の都合でアメリカにいたから可能であればアメリカ!」と考え、自分のキャリアを再構築する道を選んだ。
アメリカで働くなら 転職サイトを上手く利用しよう
一般的に「海外で働く」となると最初に思いつくのは「ワーキングホリデー」ではないだろうか? カナダやオーストラリアなど多くの英語圏では利用可能な制度だが、実はアメリカにはワーキングホリデーの制度はない。そのため多くの場合「アメリカで働く」となると「ビズリーチなどの日本の海外転職サイトを利用すること」が最初の一歩となる。しかし、アメリカ転職サイトも利用することをここではオススメしたい!
日本では利用者が限られているLinkedIn だが、アメリカではリクルーターや企業が積極的に活用する主要なプラットフォームとなっている! 私がアメリカで出会った多くのリクルーターも、「候補者を探す場合、まずはLinkedIn を使う」と話しており、実際、私にも3ヶ月に1回ぐらいの頻度で「こんな仕事があるけど興味あるか?」といったメッセージが送られてくる(「キャリアアップを目指さない? うちの大学でMBAを一緒に取りましょう!」といった広告もかなり多いが・・・(汗))。
Indeed
次にオススメしたいのはIndeed。バイト探しのCMで名前を聞いたことがある方も多いだろうが、実は海外での仕事を探すのにも役に立つ。特に「リクルーターと繋がる」という意味では非常に便利だ。アカウントを作成し、履歴書をあげておくと、Indeedのメッセージ機能から「こんな仕事がありますけど、どうですか?」という連絡だけでなく「Indeed で履歴書を拝見しました」というリクルーターからも連絡があり、私の場合、5〜6つぐらいのリクルーターと繋がることができた。
Quick USA & Actus
LinkedIn や Indeed で仕事を探す際、求人情報にビザサポートをしてくれるか否かの説明が書かれていないことが多く、適切な求人を探すのに時間がかかることがある。
この点、Quick USAやActusのような日本人向けの転職エージェントは、ビザサポートの有無で求人情報をフィルタリングできるため、効率的に仕事を探すことができる。また、これらのエージェントは日本語でのサポートも提供しているため、英語力で話すとなるとドキドキしてしまうといった方でも安心して利用できる。

英語の履歴書を用意しよう
そして、アメリカでの現地採用を目指すのであれば、英語の履歴書(Resume)を用意するのは必須!(ビザによっては、駐在者の妻・夫も働けるので、ぜひともチャレンジしてもらいたい!)
しかし、英語の履歴書は日本語の履歴書とは異なり、単に学歴・職歴を列挙するだけではなく、各職務で自分が何を達成し、どのように貢献してきたかを具体的に記載する必要がある。これは一見、手間がかかりそうに思えるが、最近ではChatGPT などのAIツールを活用することで、効率的かつプロフェッショナルな履歴書が作成可能となっている。
では、具体的にどのように進めるべきか?参考までに「私ならこう進める」という手順を記載しておこう。
(1) マイクロソフトWordで履歴書のテンプレート選ぶ(特に決まった形はなく、デザイン性を重視する人もいるため自分好みのものを選ぶ。Googleなどでテンプレートを検索するのも可)。

(2) テンプレートで学歴・職歴がどのように記載されているかを確認し、それに沿って、これまで自分が学んできたことや、どのような仕事を経験してきたか具体的に書き出す(例:「売上を前年比20%向上させる施策を提案・実行」など。箇条書きでOK)。
(3) AIを活用し「以下の学歴と職務内容を英語の履歴書向けにまとめて」と指示。もうすでに応募したい仕事が見つかっているのであれば「上記に作成した職務内容を以下の求人情報に合うように調整して」とカスタマイズ。
(4) 出力されたものをテンプレートに貼り付けていく。フォントやレイアウトを統一し、不要な情報は削除。
(5) 完成した履歴書を基にLinkedInの自分のページを更新。
まず一歩を踏み出そう
海外で仕事を得るためには、地道な準備と行動、そして強いメンタルも求められる。新しい環境に飛び込むには不安が伴うもの。生活がガラッと変わることへの戸惑い、親戚や友人からの反対、自分のコンフォートゾーンから抜け出す勇気 ――これらを乗り越えなければならない場面が必ず訪れる。さらに自分の中で「本当にこれがやりたいことなのか?」という迷いや「もう若くないんだからやめておこう」「自分の英語力なんて大したことないんだからやめておこう」と、自分ができない言い訳が次々と頭に浮かぶこともある。
しかし、忘れてはいけないのは、人生は一度きりということ。もし海外で働きたいという願望があり、家族のサポートがあるのであれば、絶対にチャレンジしてみるべきだ! まずは小さな一歩から。「LinkedInとは何なのか調べてみる」「Indeed で仕事を探してみる」「英語の履歴書とはどんなものなのか見てみる」といった取り敢えず動き出してみるのが良いだろう。「夢の海外転職!」は、その先に必ずあるのだから。
藤井拓哉(ふじい・たくや)

1984年生まれ。父親の都合で3歳~6歳までと、15歳~24歳までをアメリカのオハイオ州で過ごす。オハイオ州立大学、同大学院で教育学を学び、日本語の教員免許とTESOL(英語を母国語としない方のための英語教授法)を取得。帰国後は、宇都宮大学で英語講師を務める。数学、化学、生物学、物理学を英語で学ぶ「理数系英語」の講義を定期的に行い、2010年と2013年に学生による「授業評価アンケート」をもとに選ぶ「ベストレクチャー賞」を受賞。その後、上智大学、筑波大学などで英語講師を務めた後、2023年から家族でアメリカ暮らしを始める。著書に『たくや式中学英語ノート』シリーズ(朝日学生新聞社)、『MP3CD付き ガチトレ 英語スピーキング徹底トレーニング』シリーズ(ベレ出版)。TOEIC955点、TOEFL101点。
「たくや式中学英語ノート」全10巻
【著者によるYouTubeビデオ講義付き】

中学英語の基本を学年別・単元別に学ぶ、書き込み式薄型問題集シリーズです。
「中学生のときに英語が本当に苦手だった」と自認する著者がつくるテキストは、英文法を基礎の基礎から丁寧に解説し、豊富な問題で繰り返し英文を書かせるのが特徴です。前に習ったことの復習が何度も出てくるので、自分の弱点を知って、正しい英語を身につけることができます。
「たくや式 どんどん読める 中学英語長文」全4巻
【著者によるYouTubeビデオ講義付き】

学年別の単語・文法を使ったオリジナル長文(会話文・メールの文章・ブログの文章・講義など)を各巻11話収録。どの学年の方も、無理なくどんどん長文が読める仕組みになっています。定期テストや入学試験でよく出題される穴埋め問題や、文脈把握問題のほか、たくや式ならではの、「英語の文法を自分の言葉で説明できるか」を問うたくさんの問題を収録。
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