●一石五鳥の優れもの

大揺れ、家具転倒、停電、ガラスの破片が飛び散る中、素足で逃げられますか? 地震でけがをしないためには、家具類の固定と共にガラス飛散防止フィルム(以下「フィルム」)を貼る必要があります。

フィルムには強風時飛来物衝撃防止、省エネ、防犯、UVカット効果もあり、一石五鳥の優れものです。窓だけでなく、戸棚、タンス、ドレッサーなど、家中のガラスに貼ると安心です。

すでに貼ってあっても、経年劣化で効果が半減しますから、10年過ぎたら貼り替えましょう。確実に貼るには「ガラス用フィルム施行技能士」の国家資格を持っている専門職に依頼するといいのですが、ここでは自分で貼る場合のコツを伝授します。

1995年1月の阪神・淡路大震災で(筆者撮影)

●準備するもの

フィルムは、強度・耐久性などの基準を満たしたJIS規格適合品を選びます。一般的な窓であれば厚さ50μ(ミクロン)以上のもの、一辺が2メートル以上の大きい窓なら厚さ70μ以上が良いと思います。

準備するものは、フィルム・水・中性洗剤・霧吹き・メジャー・定規・カッター・ゴムベラ・タオル数枚です。

貼る作業の前に、200ミリリットル~300ミリリットルの水に中性洗剤を2~3パーセント混ぜた石けん水を作って、霧吹きに入れておきます。水の飛び散り防止にタオルを窓下の床に敷き、ガラスの内側に石けん水をたっぷり吹きかけ、ゴムベラなどで丁寧に汚れを落とします。フィルム貼りは二人一組でやると効率よくきれいに貼れます。

●貼る手順

①フィルムをカット 貼るガラスのサイズをメジャーで測り、それより縦横2~3センチ大きくフィルムを切ります。

②石けん水の吹きかけ 貼るガラス面に石けん水をたっぷり吹きかけます。

③保護フィルムを剥がす フィルムの保護フィルムを剥がします。一人が持ってもう一人が剥がします。剥がしながらフィルムの接着面にも石けん水を吹きかけます。

④貼る ガラス面とフィルム面に石鹸水が付いているので、くっつく心配はなく、大きな気泡ができないようにガラスにフィルムを貼り付けます。

⑤上から霧吹き 貼り付けたフィルムの上から、また石鹸水を吹きかけます。そして、ゴムベラで上から下へとゆっくり空気と水を押し出します。

⑥余分なフィルムカット ガラスからはみ出しているフィルムに定規を当て、カッターで窓枠から2~3ミリメートル隙間を空けて切ります(温度変化の伸縮対策)。

⑦水分を取り除く 最後にタオルなどで水分を取って完了。

ミクロン

 フィルムの厚みは1ミリメートル以下のため、単位はµ(ミクロン)を用います。100ミクロンは0.1ミリメートルに相当します。

山村 武彦(やまむら たけひこ)

防災システム研究所所長。東京都出身。実践的防災・危機管理の第一人者。1964年、新潟 地震でのボランティア活動を契機に、研究所を設立。以来50年以上、世界中で発生する災害の現地調査を実施。報道番組での解説や講演、執筆活動などを通して防災意識の啓発に取り組む。企業や自治体の社外顧問やアドバイザーを歴任。防災・危機管理マニュアルの策定など、災害に強い街づくりに携わる。座右の銘は「真実と教訓は、現場にあり」。

(朝小つながる新聞2025年3月20日付)