
6月は多くの会社で株主総会が開かれます。株主が集まり、会社の経営に関するさまざまなことを決めます。最近は「物言う株主」もニュースにたびたび登場します。
出資者が経営状況知り、会社に意見できる機会
Q どういう集まりなの?
A 出資をした株主が集まり、会社の経営に意見

株式会社は「人類最大の発明」ともいわれます。お金はあるけれどビジネスのアイデアがない人と、お金はなくてもアイデアはある人を結びつけるのに良いしくみだからです。お金がある人が出資をして「株主」となり、アイデアがある人が会社を起こして「経営者」になります。株主は、会社の活動で生まれたもうけを「配当」として受け取れます。

こうしたしくみがあると、ビジネスのチャンスを形にしやすく、経済の発展につながります。ちなみに日本で初めて株式会社をつくったのは、日本経済の基礎を築いたといわれ、新しい1万円札の「顔」になった渋沢栄一です。
世の中には株主と経営者が同じ人という会社がけっこうあり、株主総会が開かれないこともあります。株主総会を大規模に開くのは、株式市場などに上場して株主が多い会社や、大企業が中心。株式会社の中でも数は少ないです。
ただ、こうした会社の行動は、経済に大きく影響します。そのため、株主総会で話し合われた内容や、経営者の行いがニュースで伝えられることが多いのです。
株主総会ではお金を出してくれた株主に、経営者から会社の経営状況などを説明します。そして株主からの質問に答えます。特に事件や不正などが起きた会社では、社内のチェック体制や対策について聞かれることがあります。
日本の法律では、1年の活動で生まれた利益を計算する「決算」の期末日などから3か月以内に開く決まりがあります。日本では3月が決算の会社が多いため、株主総会が6月に集中するのです。
Q どんなことを話し合う?
A 経営者を選び、案の賛否を問うことも

お金を出した株主には、会社の先行きを決める権利があります。そこで株主総会で「議案」を示して、それぞれの株主に賛成か反対かを問うことがあります。
株主ごとに考えはさまざまなので、持つ株の数に応じて「議決権」が定められています。最終的に賛成の割合が半数をこえるかどうかが決め手になります。そこで、持ち株の多い大株主の考えに注目が集まります。
株主総会では会社を経営する取締役も選びます。大株主が会社の経営に不満があると、取締役の交代をせまったり、株主の提案としてほかの候補者を出したりすることがあります。このような提案は、資本主義の本場であるアメリカではめずらしくないですが、日本ではそれほどありませんでした。ただ最近では「物言う株主」の行動が、たびたびニュースで取り上げられるようになりました。


最近のNEWS
トヨタにも「物言う株主」 経営者の姿勢に注目
株主総会などで経営について積極的に提案する株主を「物言う株主」と呼ぶことがあります。これは「経営は経営者に任せるのが当たり前」という考えから来る呼び方ですが、株主はリスク(危険)をとって出資をしているので、意見を伝えるのは当然の権利です。
6月にあった株主総会では、自動車メーカーのトヨタなどが起こした不正に対して株主が意見をしたり、業績が良くない会社の取締役にプロの投資家が交代をせまったりする場面がありました。経営者が株主の意見に耳をかたむけ、会社の価値を高めたり、社会に貢献したりできるかどうかが、さらに注目されます。

■解説者
崔真淑
エコノミスト 「グッドニュース アンド カンパニーズ」代表取締役
(朝日小学生新聞2024年7月5日付)

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