
累計発行部数7万部突破「たくや式」英語問題集シリーズの著者・藤井拓哉さんが、家族でのアメリカ生活や家庭での英語学習についてつづります。
2年間のアメリカ暮らしで感じた日本との違い
アメリカに暮らしはじめて2年間。いろいろな貴重な経験をしているが、今回はその2年間を通じて見えてきた、日本のすばらしさについて少しお話ししたい。
日本人の真面目さと時間厳守の文化
日本に住んでいると「電車やバスは発車予定時刻に出発する」「メールでの問い合わせが1〜2日で届く」というのを「当たり前」と考えてしまいがちだが、アメリカに住んでいると「これは実はかなりすごいこと!」ということを感じる。
アメリカの場合、バスや電車の発車予定時刻が遅れるのは当たり前。仕事の締め切りも「交渉可能」と思っている人が多く、期日を守らないこともしばしば。メールに関して言えば送ってもなかなか返事が来ないということもよくある。(そのため、アメリカで生活する場合、電話で対応できる英語力がないと人生ハードモードに突入する恐れが・・・)
きめ細やかなサービスとおもてなし
日本の「おもてなし」の文化は、世界でも特に優れている。例えば、日本のスーパーでは、店員が笑顔で「いらっしゃいませ」と挨拶し商品の扱いも丁寧。しかし、アメリカでは店員が無言のままレジを打ち、商品を投げるように扱うということもよくある。閉店時間近くにレジに並んだ際、ため息をつかれ、明らかに嫌そうな顔で対応されたこともあった。確かに気持ちは分かるが、日本ではそのようなことを一度も経験したことがなかったので驚いたのを覚えている。
また、サービスについてよく比較されるのが日本の空港と海外の空港での荷物の扱い方についてだ。インターネット上では、アメリカや中国などの空港では手荷物が投げ飛ばされたり、乱暴に扱われたりする動画が話題になるが、日本の空港ではそのような光景はほとんど見られない。地上スタッフは荷物を慎重に運び、ターンテーブルに置く際も丁寧に並べることが多い。こうした「見えないところでも手を抜かない姿勢」は、日本の誇るべき文化の一つであり、日本ならではのサービス精神の表れなのではないだろうか。
スーパーで落ちている商品を直す日本人
スーパーについてもう一つ。日本のスーパーでは床に商品が落ちていることを目にすることはあまりない。その理由は、店員だけでなく、お客さんも床に落ちている商品を元の棚に戻す習慣があるからだ。しかし、アメリカのスーパーでは落ちた商品がそのまま放置されていることが珍しくない。
なぜか? それは、まず「アメリカでは『役割分担』の考え方が強く、お客さんは『(商品を棚に戻すのは)自分の仕事ではない』と考えるから」という理由があげられる。驚くことに店員ですら、「自分はレジ担当だから」「自分はお惣菜担当だから」と自分の業務範囲外のことには手を出さないことがある。
さらに「自分に関係なければ気にしない」という個人主義的な考え方の影響もあり、落ちた商品が誰かに踏まれ、箱や袋が破れ中身が散乱している光景もよく目にする。こうした違いからも、日本人の公共意識の高さは際立っていると感じられる。

子どものしつけ
アメリカで暮らしていると、「日本の子どもはしっかりしつけができている」と言われることが多い。実際、日本の子どもたちは、列に並ぶ、順番を待つ、おもちゃを共有する、迷惑をかけたら謝るといった基本的なマナーが自然と身についている。一方、アメリカではそうした行動ができない子どもが多く、列に割り込んだり、注意されても言い訳や逆ギレをしたりする子も珍しくない。
ただし、日本人は「和を大切にする」文化があるため、時として「おとなしい」と見られがちで、自己主張を求められるアメリカでは存在感を示しにくいこともある。そのため、日本人の子どもは「ルールを守る姿勢を大切にしつつ、意見を求められる場ではしっかり自己主張する」といったバランスが重要である。
学校給食
日本の学校給食は、栄養バランスの良さ、食文化を学ぶ機会の多さ、協調性を育む環境など、アメリカの学校ランチと比べて多くの点で優れている。日本では、ご飯・味噌汁・主菜・副菜といったバランスの取れた食事が提供され、郷土料理や季節の食材を取り入れることで、食文化への理解を深める機会にもなっている。また、全員が同じものを食べることで好き嫌いを減らし、食事のマナーや協調性を学ぶ場にもなっている。
一方、アメリカの学校ではカフェテリア方式が一般的で、子どもたちはピザやフライドチキンなど限られたメニューから自由に選ぶか、家から持参したランチを食べるため、ジャンクフードばかりを選ぶ子も少なくない。
加えて、日本の給食は自治体の補助があるため比較的安価で提供されるのに対し、アメリカでは家庭の経済状況によって無料・割引・全額負担に分かれるため、食事の質が格差に影響されることもある。このように、日本の学校給食は子どもたちの健康を支えるだけでなく、食育や社会性の形成にも貢献する、世界に誇るべきシステムだと感じる。

アメリカに住むと、「日本人の真面目さ」「きめ細やかなサービス」「給食の素晴らしさ」など、日本の良さを改めて実感することがたくさんある。海外に出てみることで、日本の文化や価値観の素晴らしさを再認識でき、自分の国に誇りを持てるようになるのは貴重な経験だ。
もちろん、アメリカにも素晴らしい文化や考え方がある。まだ2年間しか住んでいないのだから、見えていない部分もたくさんあるだろう。そのため、これからも家族で様々な経験をし、アメリカ生活を楽しんでいけたらと思う。
藤井拓哉(ふじい・たくや)

1984年生まれ。父親の都合で3歳~6歳までと、15歳~24歳までをアメリカのオハイオ州で過ごす。オハイオ州立大学、同大学院で教育学を学び、日本語の教員免許とTESOL(英語を母国語としない方のための英語教授法)を取得。帰国後は、宇都宮大学で英語講師を務める。数学、化学、生物学、物理学を英語で学ぶ「理数系英語」の講義を定期的に行い、2010年と2013年に学生による「授業評価アンケート」をもとに選ぶ「ベストレクチャー賞」を受賞。その後、上智大学、筑波大学などで英語講師を務めた後、2023年から家族でアメリカ暮らしを始める。著書に『たくや式中学英語ノート』シリーズ(朝日学生新聞社)、『MP3CD付き ガチトレ 英語スピーキング徹底トレーニング』シリーズ(ベレ出版)。TOEIC955点、TOEFL101点。
「たくや式中学英語ノート」全10巻
【著者によるYouTubeビデオ講義付き】

中学英語の基本を学年別・単元別に学ぶ、書き込み式薄型問題集シリーズです。
「中学生のときに英語が本当に苦手だった」と自認する著者がつくるテキストは、英文法を基礎の基礎から丁寧に解説し、豊富な問題で繰り返し英文を書かせるのが特徴です。前に習ったことの復習が何度も出てくるので、自分の弱点を知って、正しい英語を身につけることができます。
「たくや式 どんどん読める 中学英語長文」全4巻
【著者によるYouTubeビデオ講義付き】

学年別の単語・文法を使ったオリジナル長文(会話文・メールの文章・ブログの文章・講義など)を各巻11話収録。どの学年の方も、無理なくどんどん長文が読める仕組みになっています。定期テストや入学試験でよく出題される穴埋め問題や、文脈把握問題のほか、たくや式ならではの、「英語の文法を自分の言葉で説明できるか」を問うたくさんの問題を収録。
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