
朝日小学生新聞と朝日中生新聞の読者から集まった質問や相談に、人気絵本作家のヨシタケシンスケさんが答える連載です。(構成・奥苑貴世)
Q 絵以外で得意なことがあれば教えてください。また苦手なことはありますか?(まっちゃん・奈良県・高3)
「ネガティブ思考」が仕事につながりました
A 絵も自分では得意だと思ってやっているわけじゃないんです。それ以外が苦手すぎて、相対的に得意に見えているだけなんですけど。
得意なことで思いつくのはやはり「ネガティブ思考」ですね。悲観的に考えるのは、すごく得意です。もう全部おしまいだ、何もかもダメだ!というように、後ろ向きに考えてばかりです。苦手なことはもちろん「ポジティブ思考」。前向きに物事を考えることはすごく苦手です。
でも、ネガティブなことばかり考えてきて、それが今お仕事にまでなっているので、ネガティブであれポジティブであれ、突きつめたら芸になるんですよ。何かから逃げるのは簡単だけれど、逃げ続けるのは大変です。逃げ続けることで芸風になったりもする。苦手から最後まで逃げ切ってやるぞ、みたいなやる気が、別のことに向かったりする。
「苦手なことをなくして、いろんなことをやろう」という努力でかなう夢もあるし、「苦手なことはやらない」ことでかなう夢もある。先生や親が言う「目標を持って頑張ろう!」だけじゃない。僕は「そうじゃない生き方もあるんだよ」と言う係。
得意と苦手は個性の違う言い方でしかない。自分の偏りやバランスの悪さを何に平和利用するかということ。世の中には意外とネガティブな人は多いので、自分と同じような人がどう考えるかが分かれば、解決方法も提案できます。元気のない人にはどう言えば元気が出るのか、とか。ポジティブさ、ネガティブさは使い道によっては人のために使えるんですよね。
ヨシタケシンスケ

絵本作家・イラストレーター。1973年、神奈川県生まれ。2013年に『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で絵本作家デビュー。展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない たっぷり増量タイプ」が3月20日から6月3日までCREATIVE MUSEUM TOKYO(東京都中央区)で開催(https://yoshitake-ten.exhibit.jp/tokyo/)。その後、従来の「ヨシタケシンスケ展かもしれない」に戻り、秋田、愛媛、高知、山口、鹿児島などを巡回予定。
(朝日中高生新聞2025年3月16日号の記事を再構成)

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