小型で軽いのが特徴 不適切な捨て方で火災も

Q どんな電池なの?

A ゲーム機など身近な製品に広く使われ、そのぶん火災も増加

■解説者 福地慶太郎 朝日新聞東京本社くらし科学医療部記者

充電式のリチウムイオン電池は小型で軽く、持ち運びがしやすいのが特徴です。そのうえ、一度にたくさんの電力をためられます。

便利なので、身の回りの製品に広く使われています。たとえば携帯ゲーム機やモバイルバッテリー、スマートフォン、手持ち式の扇風機などです。

ただ、捨て方には注意が必要です。ほかのごみと混ぜて捨ててしまうと、ごみ収集車や処理施設などでおしつぶされたときに圧力がかかり、火がつく危険があります。

ごみ処理施設での火災現場からみつかったリチウムイオン電池など=6月6日、福岡市 朝日新聞社

環境省の調査によると2023年度、全国のごみ収集車や処理施設でリチウムイオン電池が原因とみられる出火や発煙などが計2万1751件ありました。1日あたり約60件起きているペースで、19年度に調査を始めてから最多です。リチウムイオン電池が使われる製品が増えたことなどが理由と考えられます。

23年度に起きた事例のうち、出火は1万5145件。5割強は職員が消火し、4割は散水設備などで対応されました。84件は、消防隊が消火したといいます。出火ではない煙の発生が3606件、火花の発生が2343件でした。

ごみ収集車や処理施設で火災が起これば、元に戻すのに多くの費用がかかるうえ、作業をする人たちの身に危険がおよぶ可能性もあります。環境省はこうした火災による全国での被害額を、21年度で100億円ほどとみています。

朝日新聞社

Q 不要な電池の処分どうすれば?

A 地域ごとに差があり、環境省がごみ処理の手引見直し

■解説者 福地慶太郎 朝日新聞東京本社くらし科学医療部記者

リチウムイオン電池の回収方法は住む地域によってちがいます。まずは調べることが大切です。

たとえば、家電量販店や役所に回収ボックスを置いていたり、申しこみを受けて家庭まで回収に来てくれたりするケースがあります。製品から取り外した状態のリチウムイオン電池であれば、他の電池といっしょに週1回、回収している自治体もあります。

家電量販店などに設置されているリチウムイオン電池の回収ボックス 一般社団法人JBRC提供

一人ひとりが気をつけることで、ごみ収集車や施設の火災を防ぐことができます。資源を有効に使うことにもつながります。

ただ、リチウムイオン電池本体や、電池を取り外せない製品を回収する自治体は、全体の約4分の3にとどまります。自治体がしくみを整えるのも課題の一つです。

環境省は今年3月、市町村向けのごみ処理の手引を見直しました。住民が利用しやすい施設に回収ボックスを置くなど整備を進めることや、リチウムイオン電池が使われている製品を住民に知らせることなどを求めています。

最近のニュース

火災の原因、最多はモバイルバッテリー

環境省の調査では、2023年度に充電式リチウムイオン電池によるとみられる火災が発生したのは全国の344市区町村です。このうち、原因になった製品がわかっていたのは221市区町村でした。

原因の製品について聞いたところ、最も多かったのはモバイルバッテリー。7割超の170市区町村が経験していました。そのほか加熱式たばこが約5割、コードレス掃除機が約3割、スマートフォンと電気かみそりがそれぞれ約1割に上りました。ロボット掃除機やワイヤレスイヤホンという回答も数%ずつありました。

■解説者
福地慶太郎
朝日新聞東京本社くらし科学医療部記者

(朝日小学生新聞2025年6月21日付)