3年に一度の参議院議員選挙が20日に投開票されます。そもそも国会にはなぜ、衆議院と参議院の二つがあるのでしょう。どのようなちがいがあるのでしょうか。

任期6年で解散なし 「良識の府」としての役割
Q 参議院があるのはなぜ?

国会には衆議院と参議院という二つの院があります。国会に提出された政府の予算案や法案はそれぞれの院で審議され、ふつうは両方の院で可決されると、予算や法律として成り立ちます。二つの院があることで、よりていねいな審議ができると考えられています。
二つの院の最も大きなちがいは任期です。衆議院議員の任期は4年ですが、その前に議会が解散され、全員を選び直す総選挙が行われることがほとんどです。一方、参議院議員の任期は6年。解散はなく、3年に一度の選挙で半数ずつを選び直します。
任期が短い衆議院議員は選挙で有権者の審判を受けることが多く、参議院よりも国民の意見をよく表していると考えられています。このため首相選びや予算決めなどの大事な問題で、二つの院の審議の結果がちがったときには、衆議院が優先されます。

一方、任期が長い参議院議員は、じっくりと政策を勉強して仕事に取り組めるという良い点があります。このことから、参議院は「良識の府」とも呼ばれます。
参議院議員選挙の結果によって首相が交代することは、あまりありません。首相を最終的に決めるのは衆議院だからです。ただ、今回はいつもの選挙とようすがちがいます。石破茂首相はいま衆議院では、自民党と公明党で合わせても議席の過半数に満たない「少数与党」によって支えられています。参院選でも自民党が負けて少数になれば、石破首相が交代させられるかもしれないのです。

Q 選挙の注目点は?

そんな今回の選挙で、有権者の票をより多く得られるのはどの候補者や党になるでしょう。判断のポイントになりそうなのが、物価高に苦しむ国民を助けるための公約です。とりわけ注目されているのが、消費税をどうするかです。

ほとんどの野党は、期限を区切ったり、食品に限ったりして消費税を減税すべきだとうったえています。これに対し与党の自民党と公明党は、減税の公約はしない方針です。消費税として集められた税金は年金や医療、介護、子育て支援に使われることが決まっていて、減らすわけにはいかないというのがその理由です。
与党はその代わりに、すべての国民に給付金を配ろうと考えています。このちがいが勝敗を分けることになるかもしれません。このほか、夫婦で別々の姓を選べる「選択的夫婦別姓制度」を認めるかどうかや、「政治とお金」の問題をどう解決すべきかなども争点となりそうです。
【メモ】主要7か国はすべて二院制
世界には、日本のように二つの院がある二院制の国と、一つだけの一院制の国があります。各国の議会でつくる国際組織「列国議会同盟」によると、世界188か国のうち81か国が二院制、107か国が一院制。二院制は先進国や大きな国に多く、アメリカやイギリスなど主要7か国(G7)はすべて二院制です。一院制の国には韓国やインドネシアなどがあります。
二院制は国民の広い意見が反映されること、一院制は何でも素早く決められることが長所とされます。しかし長所は欠点にもつながるため、どちらがいいとはいえません。
解説者
国分高史
元朝日新聞編集委員
(朝日小学生新聞2025年7月5日付)

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