RSウイルス感染症

ママ 今二人目を妊娠中なのですが、妊娠中のRSウイルスワクチン接種を勧められてどうしようか迷っているんです。そもそもRSウイルスって何ですか。

モモ RSウイルスは日本語で呼吸器合胞体ウイルスと言って、呼吸器感染を引き起こし、乳幼児や高齢者では重症化して細気管支炎や肺炎になる可能性があるので注意が必要です。毎年秋から春にかけて流行しますが、インフルエンザが全年齢層に流行するのに対して、RSウイルスは圧倒的に小児が多いのが特徴です。

百日咳が世界的に流行 妊娠中でもワクチン接種はできますか?

朝小プラスライフ

ママ でも、上の子はこれまでRSウイルスに感染してないですよ。

モモ 感染しても、通常は、発熱、鼻水、咳などの軽い風邪症状なので、RSウイルス感染症と気づかないこともありますが、生後1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の小児が一度は感染していると言われています。

ママ そんなにありふれた病気なのね。

モモ しかし、乳幼児で入院が必要な程度に重症化すると1%ぐらいの死亡率がありますから、単なる風邪とは違います。世界的には6か月未満の乳幼児の死亡の3.6%がRSウイルス感染と言われており、重大な問題になっています。

ママ いい治療法がないのかしら。

モモ かかった後には対症療法以外に治療がありません。予防としては流行期に重症化を防ぐために投与する抗体の注射がありますが、ワクチンではないので毎月接種する必要があります。今回、あなたが勧められたワクチンは、妊娠24週~36週に母体に1回接種すると、お母さんの作った抗体が赤ちゃんに移行して生後数か月間有効となり、一番重症化のリスクが高い時期をカバーできるのです。

ママ そんなにいいワクチンがあるのに、前の妊娠の時には勧められなかったわ。

モモ 実はこのワクチンの開発は数十年前から始まっていましたが、2023年にやっとアメリカで承認され、日本では2024年から接種開始となったばかりだからです。

ママ まあ、じゃあこの子はラッキーね! それ打ってもらいます。

百枝幹雄(ももえだ・みきお)

 1958年生まれ。84年に東京大学医学部卒業。東大講師、聖路加国際病院副院長を経て、現在、総合母子保健センター愛育病院 院長。ウィメンズヘルス、内視鏡手術などを専門とする産婦人科専門医。

(朝小かぞくの新聞2025年7月20日付)