沖縄県に7月25日、大自然と冒険を楽しめるテーマパーク「ジャングリア沖縄」がオープンします。観光業が盛り上がると期待されますが、地元からは不安の声もあります。

やんばるの自然を体感 沖縄北部に活力を
Q どんなテーマパーク?
A アトラクションに温浴施設も

ジャングリア沖縄は、那覇市から車で北に1時間半ほど進んだ、「やんばる」と呼ばれる沖縄本島北部の山あいにできるテーマパークです。広さは、千葉県浦安市にある東京ディズニーランド(約51ヘクタール)よりも少し広い、約60ヘクタール。やんばるの自然を空からながめる巨大な気球や、森林の中を車で恐竜からにげ回るアトラクションなどが20以上設けられ、温浴施設もあります。

沖縄県にテーマパークをつくる構想は、10年以上前からありました。2015年に、大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が沖縄本島北部への進出を発表しましたが、その後、USJを運営する組織が変わったこともあり、約1年で計画はなくなりました。しかし、当時USJの幹部だった森岡毅さんが立ち上げた会社などが、18年にジャングリア構想を発表したのです。

ジャングリアに使われるお金は約700億円。観光業を盛り上げる新しい施設として注目されています。特に期待が寄せられているのは、地元の経済がうるおうこと。沖縄県では長年、日本本土の大きな企業が県内の公共工事(国や地方自治体などが注文を出す工事)などをうけおうことで、地元にもうけが残らないといわれてきました。一方、ジャングリアは地元で有名な会社もお金を出し、オープンまでに約1300人をやとうとしています。
Q 地元の人はどう思っている?
A 所得が上がることに期待も、オーバーツーリズムが心配

沖縄県の県民1人あたりの所得は全国最下位。とりわけ北部は那覇市などがある南部に比べて所得が低く、人口が減ったり、地域の活力が下がったりする課題もあります。これまでも地方を活性化させる国の政策として、公民館やスポーツ施設がつくられましたが、状況は大きく変わっていません。
しかしジャングリアは民間の会社による事業で、県民の所得などを上げる道をえがける可能性があると、専門家もいいます。
一方で、多くの住民が心配するのは、観光客が来すぎてしまう「オーバーツーリズム」。ジャングリアへと続く道路は通勤や通学、買い物などに利用されています。観光客がおしよせ、渋滞が起きると生活が不便になるのではと不安を抱える住民も少なくありません。
国が周辺の道路整備を進めていて、今年1月には石破茂首相も「早く実現できるよう力を入れていく」と話しましたが、完成時期はかなり先となる見通し。ジャングリアは空港や周辺ホテルからバスを運行するほか、チケットの販売量を設定するなどの対策をとると発表しています。

メモ
製造業などが育たず 観光にならぶ産業を
沖縄県外からの観光客数は2018年度に1千万人をこえました。20年からのコロナ禍で一度落ちこんだものの、24年度は約995万人と過去2番目の多さでした。
沖縄県はアメリカに27年間統治され、製造業などが日本本土と比べて育ちませんでした。日本復帰から50年以上たっても、観光などサービス業を中心とした第3次産業の割合が約8割と、全国的にも高いです。観光業はコロナ禍のような外からの影響で不安定になりやすい産業。専門家は「観光にならぶ産業を育てることが沖縄経済の課題」といいます。
■解説者
金子和史
朝日新聞社那覇総局記者
(朝日小学生新聞2025年7月19日付)

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