16人の隊員と専門家たち=7月5日、東京海洋大学越中島キャンパス(東京都江東区)

今年のプロジェクトに参加するのは、4~6年生の隊員16人です。それぞれが、未利用魚やゴミ問題、サメの生態など自分が興味を持つ研究テーマをかかげ、2026年2月に探究成果を発表します。

今回の専門家は、東京海洋大学海洋工学部教授の清水悦郎さん。再生可能エネルギーの活用や課題について授業をしました。

清水悦郎さん 東京海洋大学海洋工学部教授=7月5日、東京海洋大学越中島キャンパス(東京都江東区)

再生可能エネルギーとは、風力や太陽光など自然の力で生み出される、持続可能なエネルギーのこと。日本で使われる電気のおよそ2割が再生可能エネルギーで、残り8割は石油や石炭、天然ガスなどにたよっています。

再生可能エネルギーは、石炭などの化石燃料とちがい、電気をつくるときに二酸化炭素などの温室効果ガスをほとんど出さないのが特徴で、クリーンエネルギーともよばれます。地球温暖化をくいとめるためにも、再生可能エネルギーの利用を増やすことが求められていますが、「課題もあります」と清水さん。

自然の力にたよってエネルギーを生み出すため、太陽光発電の場合、くもりの日は十分な発電ができないなど、発電量が天候によって左右される点です。

また、私たちは、エネルギーを熱や電気などで利用していますが、どちらもためておくことがむずかしい性質があります。熱いお湯はしばらくするとぬるくなります。電気は、蓄電池にためることができますが、ガソリンなどの石油燃料とくらべると、とても小さなエネルギーしかたくわえることができません。充電にも時間がかかります。蓄電池の能力を高めることや、充電できる場所を増やして充電スピードを上げるなどの技術開発が求められているといいます。

電気で動く乗りものには、電気自動車や電車のほかに、船もあります。船はエネルギーをたくさん使う乗りものです。なので、今の船を電気に置きかえるのはむずかしいと思われがちです。ところが、「ゆっくり進むなら、限られたエネルギーでも長い距離を航行できるんです」と清水さん。船の場合、スピードをおよそ2分の1にすることで、4倍の距離を進むことができるといいます。「プールの中で走ろうとするととても大変ですが、歩くだけならずっと楽にできますよね。それと同じです」

「いきなり電気自動車を使う生活にはなれなくても、いまある環境で、地球のためにできることはたくさんあります」と清水さんは話します。「小学生のみなさんも、電気をむだに使わない。こまめに消すなど、より少ないエネルギーで生活できる工夫をすると、地球にやさしい暮らしにつながります」

社会人向けにする内容とほぼ同じ、というクリーンエネルギーについての講義は約1時間。子どもたちは真剣なまなざしで、ふだんは大学生が学ぶ教室で、熱心にメモをとっていました。さかなクンも一緒に聞きました=7月5日、東京海洋大学越中島キャンパス(東京都江東区)
この日の裏テーマは、参加メンバー同士でなかよくなること。二人一組になり、相手を紹介する「他己紹介」でもりあがりました=7月5日、東京海洋大学越中島キャンパス(東京都江東区)

清水さんの講義の後は、リチウムイオン電池とモーターで動く、電池推進船「らいちょうⅠ」に乗りこみました。航行中に排ガスや二酸化炭素を出さないので、環境にやさしい乗り物です。排ガスのにおいもなく、音が静かで振動が少ないのが特徴です。1時間弱の充電で4時間ほど走ることができます。

5年生の西田和駿さんは、「電池推進船は静かで、波の音が感じられたので、いごこちがよかったです」と話しました。6年生の片岡六花さんは、「船の速度をゆっくりにして走るとエネルギーをむだにしそうだけど、逆に少なくすむなんて」とおどろいていました。

電池推進船「らいちょうⅠ」=7月5日、東京海洋大学越中島キャンパス(東京都江東区)
明治丸=7月5日、東京海洋大学越中島キャンパス(東京都江東区)

東京海洋大学越中島キャンパス内にある明治丸も見学しました。明治丸は、日本に現存するただひとつの鉄の船で、国指定の重要文化財。かつては、灯台の位置を測ったり資材を運んだりする灯台巡視船として活躍しました。船の全長は約75メートル。1896年に東京海洋大学の前身の商船学校にゆずられて、練習用の船などとして使われてきました。

◆次回のさかなクン探究隊は、東京湾の海の生きものたちを学ぶ予定です