
【モモ先生の健康相談所】
2024年4月から乳幼児への定期接種は五種混合ワクチンが使用されています。今日はこれから定期接種を受けるお子さんのお母さんがやってきました。
五種混合ワクチン
ママ うちの子は生後2か月になったので、来週五種混合ワクチンを接種予定です。昔は確か三種だったと思うのですが。
モモ お母さんの子どもの頃は、ジフテリア、百日咳、破傷風の三種混合ワクチンの注射に加えてポリオの生ワクチンを飲んでいたのですが、2012年から不活化ポリオワクチンを三種混合ワクチンに加えて四種になりました。さらに2013年から単剤として定期接種に導入されたヒブワクチンが、2024年から混合ワクチンに加わったので、五種をまとめて接種できるようになったのです。
朝小プラスライフ
ママ でも、そんなにたくさん混ぜてしまって大丈夫なの?
モモ 海外はもちろん、日本の臨床試験でも安全性と有効性は四種と同等で、予防接種全体の回数を減らせることがメリットです。
ママ 予防接種も進歩しているのね。ところで新しく加わったヒブって何ですか。
モモ ヒブはインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenzae type b)の略のHibです。インフルエンザという名前がついていますが、冬に流行するインフルエンザウイルスとは全く別の細菌です。感染すると細菌性髄膜炎、敗血症、喉頭蓋炎、肺炎などを起こし、特に髄膜炎では死亡率3%、神経系の後遺症20%と報告されています。
ママ まあ、怖い! ワクチンを接種すれば大丈夫かしら。
モモ ワクチン接種開始前は、ヒブによる髄膜炎が5歳未満の人口10万人あたりアメリカでは25人、日本では8人でしたが、接種開始後にはほぼ0人になりました。
ママ 予防接種がそんなに効果があるなら、他の感染症もみんな混ぜて、公費負担にしてもらいたいわ。
モモ 世の中には非常にたくさんの感染症があり、日本の感染症法に規定されているものだけでも86種類です。予防接種法で接種が全額公費負担となるものは現在15種類で、これらは重症度やワクチンの安全性と有効性、公衆衛生学的視点から決められるものです。また、それぞれ接種に最適な年齢や回数も違いますから、何でもかんでも混ぜるわけにはいきません。
ママ なるほど。まずは推奨されるスケジュールどおりに接種することが大切ね。
百枝幹雄(ももえだ・みきお)

1958年生まれ。84年に東京大学医学部卒業。東大講師、聖路加国際病院副院長を経て、現在、総合母子保健センター愛育病院 院長。ウィメンズヘルス、内視鏡手術などを専門とする産婦人科専門医。
(朝小かぞくの新聞2025年8月20日付)

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