今のようなおみくじは江戸時代中期から

「神意(神さまの意思)をきくくじは、奈良時代の書物『日本書紀』にまでさかのぼれますが、今のようなおみくじは江戸時代中期からです」。こう話すのは、国学院大学教授で神主でもある藤本頼生さん(神道学)です。

「大吉」「吉」「凶」など、おなじみのおみくじは、平安時代の延暦寺(今の滋賀県)のお坊さん「元三大師」がよんだ漢詩百首がもとになっています。江戸時代、番号が書かれた棒を箱から引き、番号に対応する紙(吉凶と漢詩が書かれたもの)で、運勢を占うのが広まりました。明治時代末期にはおみくじの自動販売機がつくられ、さらに広まりました。

小吉・末吉・吉・・・どれがいいの?

大吉が一番運勢がいいのは、みんな知っているはず。では吉と中吉ではどちらがいいか。「実は神社や寺によってちがう」と藤本さん。吉が上にくることも、中吉が上にくることもあります。

まぎらわしい小吉と末吉とでは、小吉のほうがいいとされます。末吉はもとは「未だ吉ならず」で、「未」だったのが「末」になったともいわれます。小吉と末吉の間に、半吉があることもあります。

大吉・凶の割合は神社や寺によってさまざま

では、大吉や凶が出る割合は決まっているのでしょうか。元三大師のおみくじでは基本は凶の割合は3割ほどでしたが、今は「これも神社や寺によってさまざま」と藤本さん。そもそも吉や凶が書かれていないものもあります。明治神宮(東京都)は、明治天皇とその皇后がよんだ和歌が書かれているだけ。伊勢神宮(三重県)のように、おみくじ自体がないところもあります。

傾向としては、お寺は元三大師の流れをくんで漢詩が書かれ、神社は和歌が書かれていることが多いそうです。

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自分をふり返るのに役立てて

まずはお参りをして心を落ち着けます。その後、いざ、おみくじへ。

万一、凶が出たら、それを打ち消すために2回、3回と引くのはアリでしょうか。「1回引くからこそ意味がある」と藤本さん。「凶 失せ物多し」とあっても落ちこまず「忘れ物などに気をつけよう」と思うといいそうです。「引いたおみくじは木に結びつけず、持ち帰りましょう」

東京大神宮のおみくじ=東京都千代田区

神社でのお参りは本来、「頑張りますので見ていてください」と神さまに伝えるもの。自分が努力するのが前提です。「良いのが出ても悪いのが出ても、自分をふり返るのに役立てるといい。一年の初め、神さまからのメッセージを『しるべ』として生かすといいでしょう」

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(朝日小学生新聞 2015年12月29日付の記事をもとに再構成)