
大谷義夫先生の「知っ得カルテ」
春本番を目前に、花粉症でお困りの方も多いと思います。日本人の花粉症有病率は増える一方で、国民の約50パーセント、二人に一人は花粉症を発症するもはや国民病といわれています。スギ花粉とヒノキ花粉はタンパク構造が似ているため、スギ花粉症を発症する方の多くはヒノキ花粉にも反応し、5月のゴールデンウィーク明けまで悩まされるのが現状です。
薬で治す
花粉症治療の基本は薬物療法です。抗ヒスタミン薬の内服と点鼻薬はとても有効です。抗ヒスタミン薬とステロイド点鼻薬を使用しても効果が乏しい重症花粉症の方は、アレルギーをブロックするゾレアという月1~2回の注射でとても楽になることがあります。
その際、アレルギーの数値(クラス3以上など)を調べて、健康保険適用を確認してください。高額な注射薬ですが、体重とアレルギーの数値で注射液の用量が異なります。保険3割の方では、昨年は平均で月2~3万円必要だったのですが、薬価が下がり、今年は平均で月1~2万円で接種ができるようになりました。
自分で手当てする
医療機関での処方薬や注射の前に、自分自身で対策することを、セルフメディケーションといいます。
自分自身の健康に責任を持ち、軽度の不調は自分自身で手当てをするというものです。適度な運動、バランスのよい食事、睡眠と休息などで日頃から体調を管理することが重要です。薬局での市販薬をうまく利用するのもお勧めです。セルフメディケーションは、高騰した医療費の削減にもつながります。
身近なところから
花粉を自宅に持ち込まないために、家に入る前に服についた花粉を粘着ローラーで取り除いたり、花粉の付着しやすいウールのコートを避けるのも重要です。薬局で購入する市販薬の抗ヒスタミン薬は、医療機関の処方薬ほどは効果はないことが多いのですが、軽い花粉症の方なら市販薬で十分かもしれません。
花粉症の症状を改善するためにプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)の存在が有効であることも確認されています(鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症ー2024年版)。腸内環境を整えることは、免疫バランスを整えてくれることにつながります。
連日、103万円の壁など国の予算や財源に関するニュースが報道されています。インフルエンザと新型コロナは数年前から薬局で抗原キットが購入でき、自宅で診断可能となりました。風邪薬や湿布などは、医療機関での処方薬でなく、薬局の市販薬で十分でないかと議論される時代です。
セルフメディケーションを積極的に取り入れて、花粉症を乗り切り、快適な春をお過ごしください。
朝小プラスライフ
大谷義夫(おおたに・よしお)
1963年生まれ。89年に群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授を経て、現在、池袋大谷クリニック院長。 呼吸器内科のスペシャリストとして新型コロナウイルス対策などでも情報発信をおこない、患者に寄り添う具体的なカウンセリングに定評がある。
※大谷義夫先生の「知っ得カルテ」は、今回で終了です。
(朝小つながる新聞2025年3月20日号)

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