「サッコ先生」の愛称で子どもたちへの性教育に力を入れる産婦人科医・高橋幸子さん。インタビューの後編では、家庭で性の話をするときのポイントを聞きました。(文 性教育サイト「命育」編集部・畑菜穂子)

たかはし・さちこ 産婦人科医。埼玉医科大学医療人育成支援センター・地域医学推進センター勤務。日本家族計画協会クリニック非常勤医師。彩の国思春期研究会西部支部会長。著書に『サッコ先生と!からだこころ研究所 小学生と考える「性ってなに?」』(リトル・モア)など。

小4でも「セックス」理解

小中学校で性教育の講演を年間160回ほどしていますが、子どもや保護者の反応が変わってきていると感じます。10年ほど前は、まず保護者に性教育の大切さを納得してもらわなくてはなりませんでしたが、最近は「ぜひ性教育をしてほしい」 と積極的に参加する方が多いようです。

小学4年生向けの講演では、「セックス」という言葉やその意味、妊娠について理解していて、自分が知っていることをアピールしてくれる子どもが増えました。 手を挙げて発言する子もいれば、「知っているけれど、みんなの前では答えたくない」と線引きしている子も。反応はさまざまですが、家庭での性教育が広がっていると実感します。

私が子どもたちに話すときは、限られた時間内に必要な情報を届けるために、ポジティブな言葉を選び、簡潔に伝えるようにしています。家庭ではくり返し話せる良さがあるので、子どもが理解しやすい方法を探りながら伝えるといいでしょう。

例えば、体の「プライベートゾーン」について説明するとき。「水着で隠れるところと唇はプライベートゾーンといって、特に水着で隠れる部分は、あなた以外の人が見ても触ってもいけないところ」と結論だけ話しても、子どもの心には響きません。

ポイントは、段階的な積み重ねを意識すること。まずは「あなたの体はあなただけの大切なもの。誰がどう触っていいかは、あなた自身が決めていいんだよ」と、お子さんに理解してもらうことからから始めるといいですね。 そのうえで、プライベートゾーンの説明をすると、自分に関係あることとして受け止められるようになるでしょう。

トイレに本を置いてみる

「子どもに性の話をするのは恥ずかしい」「自分が学んでからでないと話せない」と、家庭での性教育に身構えてしまう方もいるでしょう。

最近は性教育関連の絵本や書籍がたくさん出版されているので、ぜひ活用してほしいです。小学校低学年くらいまではお子さんと一緒に読む、高学年から思春 期にさしかかったら一人でこっそり読めるトイレに置いておくなど、さまざまな方法があります。

プライベートゾーンや防犯など、テーマごとに出版されている絵本や書籍があるので、伝えたい内容にあわせて選びましょう。正しい性の情報が掲載されて いるウェブサイトやYouTubeを保護者がチェックして、メールやLINEでお子さんにURLを共有してもいいですね。

私には高校生の息子がいます。自宅には性教育関連の絵本や書籍がたくさんあるので、息子が小さいころから活用してきました。

息子が小学2年生のころ、男の子の性を扱った『マンガ おれたちロケット少年(ボーイズ):知ってる? おちんちんのフシギ』(子どもの未来社)を本棚から勝手に見つけてきて、ゲラゲラ笑いながら読んでいたことがありました。

この本にはセックスや避妊についても書かれているので、読ませるには少し早いかなと思ったのですが、息子は自分が理解できる部分だけを読み、その後も何度か手に取っていたようです。子どもが自然に手をのばし、 成長のタイミングで読み返せるような本があると、とても役に立つと思います。

月1回、性教育に携わる人から話を聞き、子どもと性の話をするヒントを探っていきます。感想や取り上げてほしいテーマなどのリクエストはこちらから

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