
このコラムは、子どもの「自己肯定感」を育てたいと思っているご家庭へお届けします。
「役に立てた」喜びが自信を育てる
自分が何かをやったことで誰かが喜んでくれたら、ふわりと温かい気持ちになりませんか?「ありがとう!」「助かったよ!」と言われると、テレくさいけれどうれしいですよね。自分のしたことが相手を喜ばせたり、誰かの役に立ったと感じたりすることは、自信につながります。
脳科学者・中野信子さんの著書『自己肯定感が高まる脳の使い方』によると、脳は、人を喜ばせたり、感謝されたりという「社会的報酬」を受け取ると、神経伝達物質であるドーパミンが大量に分泌され、快感を覚えるような仕組みを持っています。こうした「誰かの役に立てた!」という社会的報酬による快感はとても強いもので、自己肯定感は上がるというのです。
ただし「ありがとう」が言われたくて、あるいは自分を認められたくて、それ自体が目的になってしまったら、本末転倒ですよね。「自己肯定感」とは、「人の役に立つから自分に価値がある」というのではなくて、「人の役に立っていてもいなくても、自分にはそもそも価値がある」という感覚のことだからです。
それでも、相手が喜ぶ姿を見て自分もうれしくなる行動を続けていくと、自分への自信を高めていきます。まずは「行動」することから始めてもいいのではないでしょうか。行動を続けているうちに、自己肯定感が確かなものになってくるでしょう。
朝小プラス子育て
昔のことわざに「情けは人のためならず」があります。その意味は「誰かに親切にすると、めぐりめぐって自分のところに返ってくる。人に情けをかけるのは人のためだけではなく、自分のためでもある」です。人のためにしたことが、ブーメランのように自分に返ってくるのです。
これまで大勢の子どもに出会ってきましたが、ほとんどの子どもは親が大好き。親に喜んでもらいたいと思っています。あなたからお子さんに、率先して「ありがとう!」「助かった」のことばをかけてあげてくださいね。
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だれかの役に立つことしてみよう
だれかの役に立つことをして「ありがとう」とことばをかけられると、うれしいよね。ありがとうって言われなくても、人がうれしそうにしているのを見てるだけで、気持ちがふんわりあったかくなる。「人の役に立てた」というよろこびは、自信を育ててくれるよ。
キミが得意なことで、だれかがよろこぶことはないかな? イラストをかいてあげるとか、マッサージをするとか……。何ができるかな? 考えてみよう。
人の役に立つことは、小さなことでいいんだ。なくしものをした友だちといっしょに探したり、両手がふさがっている人にドアを開けてあげたりするのもいいね!
キミのまわりの人のためにできることを、探してやってみて! 自分はそんなに人の役に立っていないと思っている人でも、笑顔であいさつするだけでもいいんだよ。それならできそうじゃない?
それから、キミはだれかがしてくれたことに「ありがとう」って言っている? 「ありがとう」が伝わって、その人もうれしい気持ちになるから。目に見えないけど、うれしい気持ちは伝染していくんだよ。だれかがふんわりいい気持ちになることをやってみよう。

ワークシートはこちらからダウンロードできます→https://p.potaufeu.asahi.com/asagaku/pdf/lesson/worksheet11.pdf
高取しづか
ことばキャンプ主宰。アメリカで生活した折、日本と欧米のコミュニケーションスキルの差に危機感を覚え、研究活動を行う。帰国後NPO法人JAMネットワークを結成。「ことば力」と自己肯定感を育てることばキャンプを推進し、全国で1万人以上に講演・研修活動を行う。著書多数。
高取しづかのブログ https://ameblo.jp/t-shizuka
ことばキャンプ http://kotobacamp.com/
(LINE NEWS「朝日こども新聞」2023年7月21日配信)

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