
潮田玲子さん(バドミントン元日本代表)
バドミントン日本代表として活躍した潮田玲子さんは、女性アスリートの健康や生理について考える団体「Woman’s ways」を立ち上げ、積極的に提言を続けています。きっかけは、女性特有の体の悩みを言い出せなかった選手時代の経験でした。(文 性教育サイト「命育」編集部・畑菜穂子)
生理の悩み「我慢1択」だった選手時代
アスリートには「限られた時間の中で結果を出し、輝かないといけない」という思いがあります。女性の場合、生理や月経前症候群(PMS)でコンディションが左右され、無理を続けていると低体重や無月経などの問題を引き起こし、将来の妊娠にも影響をおよぼす恐れがあります。
ところが指導者や選手本人も、そのことをほとんど知りません。私も現役時代にたびたび眠気やパフォーマンスの低下に悩まされ、「やる気がないなら帰れ!」と指導者にしかられました。「昨日できたことがなぜ今日はできないんだろう」と自分を責める日もありました。
大人になってPMSが原因だとわかってからは「できる範囲でがんばろう」と気持ちが楽になりましたが、知っているのといないのとでは大きく違います。体調が悪くても「我慢1択」しかなかった私たちのジュニア時代から、今もさほど状況は変わっていないように感じます。
私と同じような経験をしている選手たちの悩みを解消し、安心して競技を続けられるようにしたい。その一心から、元トップアスリートの杉山愛さん(テニス)、狩野舞子さん(バレーボール)、中川真依さん(水泳・飛び込み)に声をかけて、2021年 に「Woman’s ways」を立ち上げました。今は主に企業や大学、スポーツをしているお子さんとその保護者を対象にしたセミナーを開いています。
指導者やパートナーの男性こそ理解を
アスリートが自分の体について知ることはとても大事ですが、本音を言えば、指導者にこそセミナーに足を運んでほしいです。というのも、特にジュニア世代のアスリートにとって、指導者や保護者の存在や発言の影響力はとても大きいからです。また、指導者には男性が多く、選手が生理の理解を深めても、話しづらい環境があるのも事実。指導者に生理に関する正しい知識を身につけてもらい、選手をサポートしてほしいと願っています。

夫(元プロサッカー選手の増嶋竜也さん)とは、今でこそ日常的に生理の話をしますが、かつてわが家ではタブー視されていました。男兄弟の中で育った夫は、「触れてはいけない話題」だと思っていたそう。私も生理用品が夫の目に触れないように気をつけていたし、生理痛で具合が悪くても黙っていました。
そんな夫なので、「Woman’s ways」の立ち上げにも難色を示すかと思いましたが、意外にも「やった方がいいよ」と背中を押してくれたのです。
初めて女性アスリートの前で生理の話をしたのは、WEリーグ「ジェフユナイテッド市原・千葉レディース」でした。夫が引退前に在籍していたチームの女子チームだったので、夫にも立ち会ってもらいました。セミナー後に夫から伝えられたのは、「男性が生理について知ることで、女性の体調不良や機嫌の良し悪しなどの変化に気づけるし、コミュニケーションがとりやすくなる。男性が聞くべき話だ」という力強い感想でした。
家庭で私の口から伝えるより、セミナーという公の場で生理の知識を学べたことが功を奏したのだと思います。この記事を読んだ男性のみなさんも、ぜひ生理についての理解を深めていただきたいです。
朝小プラス子育て
子どもからの性の質問には「事実を淡々と」
7歳の息子と5歳の娘には、早いうちから性に関する正しい知識を持ってもらいたいと思い、絵本を読むなどして一緒に学んでいます。
あるとき娘に「赤ちゃんはどうやっておなかに入ってくるの?」と聞かれたことがあります。お友だちのママが妊娠していて気になったのでしょう。「コウノトリが運んできたんだよ」とごまかしたり、間違った情報を伝えたりすると、後で本当のことを知ったときに性をいやらしいものとしてとらえてしまう恐れも。私はむしろチャンスだと思い、医師夫妻のアクロストンさんが監修した絵本『おうちせいきょういくえほん』(主婦の友社)を使って、事実を淡々と説明しました。この絵本はシールを貼りながら「赤ちゃんができる仕組み」を遊び感覚で学べるので、とても重宝しています。

息子が小学生になってからは、私が性の話をするのを嫌がるようになりました。とはいえ、興味はあるようなので、『マンガ おれたちロケット少年(ボーイズ):知ってる? おちんちんのフシギ』(子どもの未来社)などの漫画をトイレに置く作戦に切り替える予定です。
普段は仕事で忙しく、子どもと過ごす時間は限られています。同じような悩みを持っている保護者もいると思います。今は「量より質」を重視して、一緒にいる時間はしっかり子どもと向き合うことを心がけています。スキンシップをはかったり、「会いたかった」「あなたはママの宝物だよ」ときちんと言葉にして伝えたりすることも大切にしています。

月1回、性教育に携わる人から話を聞き、子どもと性の話をするヒントを探っていきます。感想や取り上げてほしいテーマなどのリクエストはこちらから
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